南太洋のCO2吸収力が低下

海岸のシーン

従来、南大洋(南緯45度以南)地域は二酸化炭素の吸収域だと考えられていましたが、最新の研究によるとこの海洋域でも二酸化炭素(CO2)はほとんど吸収していないと見られています。
CO2吸収量の分析は日本を含む8カ国の国際研究チームが、1981年から2004年にかけての各地のデータを解析し導かれた結果です。
研究結果によると、南大洋での二酸化炭素吸収量は年間約800万トンずつ減っており、現在ではほとんど吸収していないといいます。南大洋でCO2を吸収しなくなった原因は次のように考えられています。

温暖化やオゾン層破壊による気温変化で南大洋での風が強まった
海の循環が変化
CO2濃度が高く吸収する余力が乏しい深海の海水が上昇
海表面付近に広がった

1960年頃の米国での観測では、南大洋は海洋全体の30%前後にあたる年間約6億トンの二酸化炭素を吸収していると言われていました。しかし、今回吸収量が大幅に減っていることがわかり、今後は逆にCO2の放出域に転じる可能性もあります。

海の二酸化炭素(CO2)吸収量の変化

南太平洋の砂浜
南太平洋の砂浜

これまで海洋では赤道域や北太平洋、南大洋の一部では二酸化炭素の放出域もありましたが、海洋全体ではCO2を吸収していると言われていました。(下表参照)

地球の二酸化炭素収支(単位:億トン/年)
1980年代 1990年代
化石燃料などによる放出 54±3 63±4
海洋での収支 -19±6 -17±5
陸地での収支 -2±7 -14±7
合計(CO2)収支 33±1 32±1
(正の値は増加、負の値は減少を表します)
(データ参照:気象庁)

気象庁のデータによると1990年代には1980年代よりも吸収量が減っているようです。ただし不確実な部分(プラスマイナス)もあり、より正確なデータの把握が求められます。

南極のオキアミが地球温暖化抑制に貢献!?

海にせり出す氷河
海にせり出す氷河

オキアミというと釣り餌に使われたり、クジラの食物になることぐらいしか思い浮かびませんが、実はオキアミが地球温暖化抑制に役立っているというのです。

オキアミは正式名称をナンキョクオキアミといい、南極にしか生息していません。南極では夏の時期に氷河が割れ海に植物プランクトンが大量に発生します。この植物プランクトンを食べるのがナンキョクオキアミです。オキアミは植物プランクトンを食べるときに硫化メチルを放出します。
実は硫化メチルは雲の元になる物質です、大気中に硫化メチルが増えると雲を発生させ日差しを遮ることで地球温暖化の抑制になるのです。

最近の調査で、海氷が多いほどナンキョクオキアミが増加し、大気中の硫化メチルも増えることがわかったのです。
小さな体のオキアミですが、私たちの生活にも貢献してくれているんですね。

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