パタゴニアが衣料品リサイクル
パタゴニアと聞いて米国アウトドア用品の専門メーカーとひらめいた人は、かなりのアウトドア派。実はこのパタゴニアは環境意識の高い企業としても有名です。
パタゴニアが扱うアウトドア用衣料品は、素材として綿の他ポリエステルなどの合成繊維を原料として使っています。パタゴニアはこれらの素材のリサイクル事業にも取り組んでいるのです。
パタゴニアが始めたリサイクルプログラムとは
パタゴニア つなげる糸リサイクルプログラムの進展
パタゴニアは、1993年から自社製品にペットボトルのリサイクル素材を使用したフリースを製造していました。しかし、衣料品そのもののリサイクルを始めたのは2005年に始めた「つなげる糸リサイクルプログラム」からです。
ペットボトルと違って衣料品のリサイクルは、消費者の意識が高まっていないのと、合成繊維のリサイクル技術が発展途上だと言うこともあり、あまり進んでいませんでした。
パタゴニア インナー製品
その中で、先進的な動きをしているのがパタゴニアが始めた「つなげる糸リサイクルプログラム」です。2005年当初はパタゴニアのインナー素材に使われているキャプリーン・ポリエステル製品のリサイクルから始まりました。
パタゴニア直営店などで回収されたキャプリーン製品の古着を提携企業(帝人)の再生工場でポリエステル素材に戻しているのです。
その後、2007年春からはフリースもリサイクル素材で製造されるようになり、2008年からはアウトドア用ジャケットにもリサイクル製品が登場しました。ジャケットは防水加工が施されていてポリエステルだけでなくナイロン繊維も使われています。ナイロン繊維のリサイクルには東レも提携しています。
パタゴニア リサイクルを支えるのは日本企業
パタゴニア ポリエステル製品のケミカルリサイクル @NBonline
パタゴニアの衣料品リサイクル「つなげる糸リサイクルプログラム」には日本企業も深く関わっています。ポリエステル繊維の再生は帝人の松山工場で行われます(上図参照)。パタゴニアの直営店などで回収されたポリエステル製品は帝人の工場でファスナー等をはずして繊維だけを破砕し、ポリエステル原料のDMT(テレフタル酸ジメチル)に戻します。 ナイロン素材の再生は東レが担当します。東レの東海工場でナイロン6が原料の「カプロラクタム」に戻されます。その後、東レの名古屋工場でナイロン6の生産原料として使われます。
衣料品リサイクルがどれくらい環境にやさしいのかを調べてみると、かなり効果的であることがわかります。石油原料を使ってポリエステル繊維を製造する場合と比べてリサイクルすることで、下記のように二酸化炭素(CO2)と消費エネルギーがどちらも約80%削減されるのです。ナイロン6の場合は約70%の削減になります。
- ポリエステル CO2,エネルギー削減量 約80%
- ナイロン6 CO2,エネルギー削減量 約70%
日本人の環境意識は発展途上
衣料品リサイクルに取り組むパタゴニアですが、アメリカなどの環境意識の高い国ではリサイクルプログラムはある程度進んでいるようですが、日本の現状は必ずしも順調というわけではなさそうです。
現在、パタゴニアが取り組んでいる衣料品リサイクルの方法を見てみます。
- 回収拠点
- 公式にはパタゴニア直営店およびベースキャンプ・ディーラーと呼ばれるパタゴニア正規取扱店で回収されることになっています。しかし、取材したパタゴニア正規取扱店には回収ボックスは無く、店長に確認すると古着回収についてはパタゴニアから支援はなく、お客さんがリサイクルプログラムで古着を持参されたときは自社費用でパタゴニアに送付しているとの説明でした。
- 回収対象商品
- パタゴニア製衣料品のすべてがリサイクル対象ではなく、キャプリーンと呼ばれるポリエステル素材100%の商品が回収対象です。また、2008年からは、一部のナイロン6素材を使ったジャケットも回収対象に含まれます。
日本では一部の自治体でゴミの分別を細かくし、出来るだけ再資源化してゴミを減らそうと言う取り組みをしている自治体があります。しかし、衣料品まで分類しているという話は聞きません。やはり、衣料品は素材が複雑で素人が分別するのは、困難なのでしょう。
現実的には、パタゴニアが行っているようにメーカー単位で古着を回収するしか方法は無いのかもしれません。しかし、パタゴニアのようにブランドが確立し、どこで買ったか覚えられる製品はいいですが、どこにでもある低価格衣料品を買った場合は、回収する場所もないのが実情です。
パタゴニアでもこれまでの回収実績は7000着しかないそうです。衣料品リサイクルを実のあるものにするには古着の回収率を如何に上昇させるかがこれからの問題です。