「ヒートポンプ」という言葉を聞かれたことはありますね。エアコンや電気給湯器エコキュートの心臓部として利用されている装置で、省エネルギー性能が高く地球温暖化を防止にも役立つと言われます。
ヒートポンプがなぜCO2削減につながるのか、検証してみます。

ヒートポンプが省エネに役立つ理由

ヒートポンプの原理は100年以上前に理論としては確立していました。元々は冷却技術として実用化されましたが、省エネな加熱手段として最近では暖房や給湯機器にも積極的に利用されています。
ヒートポンプは電気や振動を加えることで熱を移動させるいわば「熱のポンプ」です。エアコンに使われているヒートポンプの働きを説明します。冷房時には室内の熱を吸収し、室外に移動させ室外機で熱を発散させる動作をします。逆に暖房時は、室外の空気の熱を吸収し、室内で放出します。石油ストーブや電熱ヒーターなどの発熱原理とは根本的に異なります。

こんなヒートポンプの動作原理により、省エネにつながる次のような特徴があります。

ヒートポンプの特徴（メリット）

地球の熱を冷暖房に利用

ヒートポンプを利用したエアコンは、電熱器やガス・石油ヒーターと異なり、空気の熱などの環境熱を利用します。エアコンの使用電力はポンプを回すために利用され、熱源としては利用していません。

暖房・冷房どちらも利用可能

ヒートポンプは熱を移動させる働きがあります。同じ装置を使って、移動の方向を変えることができます。冷暖房兼用エアコンは、ヒートポンプの熱移動方向を変えることで実現しています。

地球温暖化防止に役立つ

ヒートポンプを利用した暖房、冷房装置は、二つの意味で地球温暖化防止に役立ちます。
一つは、エネルギー効率が高く消費するエネルギーよりも取り出せる熱エネルギーが大きいこと。
もう一つは、暖房に地球環境エネルギーを利用するので、地球全体で見ると熱エネルギーの増加が少なくなることです。

ヒートポンプは熱を移動させるだけで、電熱器やストーブなどのように「無」から熱を発生させないので、地球温暖化防止に役立つのは分かります。ところが、外気温が低い冬に、外気の熱を集めて、室内を暖められるのは不思議に思われるでしょう。
人間には寒く感じても外気には熱エネルギーはあるので、その熱を集めると大きな熱エネルギーとなるのです、ヒートポンプのおもしろい特徴ですね。

ヒートポンプが使われている機器

低温を作り出す機器には古くからヒートポンプが使われてきました。冷蔵庫、クーラーなどは典型的なヒートポンプ利用家電製品です。最近はヒートポンプの省エネ性能に注目し温度を下げるだけでなく、暖房や給湯など暖める機能にもヒートポンプが利用されるようになりました。エアコンの暖房機能やヒートポンプ給湯器（エコキュート）のほか、洗濯乾燥機にもヒートポンプを利用した商品が登場しました。
（参照：エコ給湯設備どちらがお得）

表で紹介した以外に、除湿器にもヒートポンプが使われています。また業務用途にも多数のヒートポンプ利用機器があります。

ヒートポンプ商品選択法

家電製品を購入するとき、性能と価格のバランスで選ぶことが多いですが、地球環境に優しいという選択基準も考慮しましょう。
「チームマイナス6%」など政府の低炭素社会移行への積極的な方針などで、主要家電製品には1999年より「トップランナー制度」が導入され、省エネルギー性能が向上しています（上図参照）。

ヒートポンプの効率を計る基準にCOP(成績計数)があります。

省エネ性能が優れたエアコンではCOP=6以上あります。COPが6ということは、消費する電力の6倍の熱エネルギーを得られることになります。省エネ家電を選ぶときは、COP値がなるべく高い商品を選びましょう。電気代と灯油代、ガス代との関係で変わりますが、COP=6以上だと石油ストーブよりも暖房費が安くなることがあります。
（参照：エアコンの電気代　VS 石油ファンヒーターの灯油代）

ヒートポンプ ここに注意

ヒートポンプを利用した機器はエネルギー利用効率が高く、地球温暖化防止にも役立ち、二酸化炭素（CO2）削減にも効果的です。しかし、ヒートポンプにも注意することはあります。

ヒートポンプにもデメリットがある

冷媒の環境問題

古いエアコンにはヒートポンプの冷媒にオゾン層を破壊するフロンが使われています。最近のエアコンは代替フロンに切り替わっていますが、代替フロンも温室ガス効果があります。 エアコンの買い換えや廃棄の時は、必ず専門業者に引き取ってもらいましょう。
（参照：温室効果ガス25%削減はCO2よりもHFCが問題）
（参照：家電リサイクル）

寒冷地では暖房性能は落ちる

ヒートポンプを利用した暖房効率は高く、省エネに効果的だと書きましたが、カタログ性能を得るには温度条件があります。一般に外気温が低くなると暖房時のCOP値は下がります。北海道などの寒冷地では、他の暖房機器を選んだ方が効率が高い場合があります。
（参照：寒冷地におけるヒートポンプエアコンによる暖房の可能性）

ヒートポンプ技術は、上記のようにわずかに注意することはありますが、冷暖房・給湯需要を賄う有力な技術であることに疑いはありません。今後の技術革新でエネルギー効率はさらに向上し、環境性能がアップするのは間違いないでしょう。ヒートポンプを賢く使って、地球に優しい生活を送りましょう。