バイオ燃料でCO2対策?
地球温暖化対策や原油価格高騰を受けて、原油に代わる代替燃料の開発が活発です。
その中でバイオ燃料(バイオマス)が注目を浴びています。日本ではまだバイオ燃料の利用は法制度の問題もあってあまり進んでいませんが、米国やブラジルではバイオ燃料を利用した車が実際に走っています。
家庭用バイオ燃料製造器
MicroFueler(家庭用バイオ燃料製造器)
バイオ燃料に注目が集まる中、米国のE-Fuel Corporationは家庭用のバイオ燃料製造器「マイクロフューラー(MicroFueler)」を開発しました(左図)。
一般にバイオ燃料はトウモロコシなどから大規模な化学工場で作成されるものですが、こんな小型のバイオ燃料製造器が開発されるとはだれも想像しなかったことでしょう。
ご覧のように形状はガソリンスタンドのポンプとよく似ています。ガソリンスタンドでは地下にガソリンタンクがありますが、このバイオ燃料製造器「マイクロフューラー(MicroFueler)」では燃料の砂糖と水をいれ、家庭用の電気コンセントにつなげるだけでエタノールを製造してくれるというのです。
開発メーカーの社長は一般消費者への販売も本気のようです。エタノール製造原料に一般的なトウモロコシを使わず砂糖にした理由は、砂糖は世界的に供給過剰状態にあるからといいます。製造コストは1ガロン(3.8リッター)当たり1ドル。「マイクロフューラー(MicroFueler)」の本体価格は1万ドルと言います。
内燃機関へのバイオマス燃料(エタノール)利用は可能
バイオ燃料とは生物体(バイオマス)から製造される燃料の総称で次のような材料から作られます。
- トウモロコシ
- サトウキビ
- 食用油
- 木材
バイオ燃料を自動車などの燃料に利用する場合は、上記の材料を使ってアルコールを製造します。バイオ燃料からアルコールを生成する場合の一般的な行程を下記に示します。
バイオ燃料を使用したエタノール製造工程(米国)
自動車の燃料用途にエタノール等のアルコール燃料が作られます。実はガソリンが普及するまでは自動車の燃料としてアルコールが主流の時代がありました。ところが、大規模油田の発見や掘削技術の向上で、低価格で原油が手にはいるようになりアルコール燃料が価格性能費でガソリンに駆逐されたのです。
最近の原油高騰や温暖化ガス削減が叫ばれるようになり、再びバイオ燃料を使ったアルコールが車の燃料として注目を浴びているのです。
エタノール、原油価格推移(米国)出典 EPA資料 Oxy-Fuel-News
バイオ燃料の課題
バイオ燃料に注目が集まっているのは、地球温暖化防止に役立つガソリンの代替燃料としてです。しかし、バイオ燃料の課題も見えてきました。バイオ燃料の明日は必ずしもバラ色とはなりそうにありません。
- 穀物価格の高騰
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国連の食料問題の特別報道官が公然とバイオ燃料を批判したように、今まで食料に使われていた穀物までバイオ燃料の原料に使われ、穀物価格が高騰しています。この影響は日本にも現れ、輸入小麦や飼料価格が高騰し、原油価格上昇と相まって物価が上昇しています。
この批判を受け、EUではバイオ燃料の普及目標の見直しを迫られています。 - ガソリンを使ってバイオ燃料を作る矛盾
- バイオ燃料を使うと化石燃料を消費しないと考えるのは間違いです。バイオ燃料を作るための全行程を考えると理解できます。まず、バイオ燃料のトウモロコシやサトウキビを作るために肥料を使ったり農作業のエネルギーを使います。アルコール燃料の製造工場を建設するためにもエネルギーが必要です。その他、製造工程、運送、貯蔵などを考えなければいけません。 たとえば、1リットルのバイオ燃料を作るために2リットルの原油が必要であれば極めてエネルギーコストが高い燃料となります。
- 流通保管にコストがかかる
- アルコール燃料はガソリンに比べて貯蔵にコストがかかります。容器を腐植させたり毒性が高く、腐食を防ぐために腐食剤を添加したりバイオ燃料専用の容器が必要になります。低温に保つ必要があるため輸送コストもかさみます。
- CO2より強力な温暖化ガスを排出する
- バイオ燃料はCO2の収支が0(ゼロ)だと言われています。しかし、地球温暖化に影響を与える温暖化ガスはCO2(二酸化炭素)だけではありません。バイオ燃料はガソリンなどと比べると亜酸化窒素の放出量が二倍あるといいます。亜酸化窒素はCO2の約310倍の温室効果を持つため、化石燃料よりもかえって地球温暖化を促進すると警告する研究者もいます。