温室効果ガス25%削減はCO2よりもHFCが問題

鳩山首相は2009年の国連地球変動サミットで日本は温室効果ガスを1990年比で25%削減すると表明しました。25%削減は非常に意欲的な数字だと国際社会から評価される一方、実現性を危ぶむ声も少なくありません。
温室効果ガスというと二酸化炭素ばかりが注目されますが、実は二酸化炭素よりも温暖化効果が強い代替フロン(HFC)がエアコンなどの冷媒として使われています。政府はエコポイント制度などでCO2削減効果のある省エネ性能の高い最新型エアコンに買い換えることを推進しています。しかし、エアコン買い換えによってかえってHFCなどの温室効果ガスが増えることになります。代替フロンの温暖化効果を警告する「見える化」シールが登場しましたが、効果は未知数です。

地球温暖化を加速する代替フロン

地球温暖化の原因は二酸化炭素だけではない
地球温暖化の原因は二酸化炭素以外にもある

地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)排出を削減しようというキャンペーン「チームマイナス6%」が政府主導で行われています。
(参照:CO2ダイエット宣言で割引クーポン
確かに二酸化炭素は地球温暖化ガスの大きな割合を占めています(上図左参照)。しかし、二酸化炭素と比べてこれまでは排出量が少なかった代替フロンが地球温暖化の原因物質としてクローズアップされています。

代替フロンとは、フロンの代わりに利用されている物質で、主にエアコンなどの冷媒として利用されています。
フロンはオゾン層を破壊し極地上空にオゾンが存在しないエリア(オゾンホール)を出現させるなど地球環境への脅威と考えられるようになりました。
(参照:南極ではオゾンホールが拡大
その後、オゾン層保護のためウィーン条約(1985年)が締結されるなど世界的にフロン生産は減少しています。そんな対策もあり、オゾンホール拡大に歯止めがかかり、今後は徐々にオゾンホールは解消する見通しとなりました。 オゾンを破壊するフロンの代わりに利用されているのが代替フロン(HCFCやHFC)です。代替フロンは、オゾン層を破壊しませんが、強力な温室効果ガスとしての側面があります。下表に二酸化炭素と比較した温室効果ガスの温暖化係数を紹介します。代替フロンのうちHFCの温暖化係数は150倍~1万倍と二酸化炭素よりも非常に強力な温暖化効果を示します。

CO2を基準にした温暖化効果
種類 気体名 温暖化係数
基準 二酸化炭素 1
メタン 21
代替フロン
HFC
トリフルオロメタン 11,700
ジフルオロメタン 650
フルオロメタン 150
1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン 2,800
1,1,2,2-テトラフルオロエタン 1,000
1,1,1,2-テトラフルオロエタン 1,300
1,1,2-トリフルオロエタン 300

HFCの環境への排出量は二酸化炭素と比較すると現在はまだ約1%程度と僅かですが、2020年には日本でも4~5%はHFC由来ガスが占め、さらに全世界で見ると途上国を中心にHFC由来物質の排出量が急激に増えると予想されています(上図右参照)。
(参照:NEDO海外レポート-HFC(ハイドロフルオロカーボン)の使用量増加と温暖化

エアコン性能向上につれ温暖化ガスが増加

エアコンは毎年省エネ性能が向上
エアコンは毎年省エネ性能が向上 (出典:日本冷凍空調工業会)

家庭で最も電力消費量が多いのはエアコンです(参照:家庭で電力消費が多いのは)。
エアコンはエコポイント制度の対象で、新製品に買い換えることで電力消費量の削減にもつながります。毎年新製品が登場する毎に、省エネ性能が向上している家庭用エアコンですが、エアコンのライフサイクルを考えると地球温暖化対策に逆行しているかもしれません。
上図に示すようにエアコン運転中の電力消費量は、新製品の方が間違いなく少なくなっているのですが、エアコンに使われている冷媒(ヒートポンプに利用されている熱交換媒体)が空気中に放出されると、二酸化炭素の数千倍の温暖化効果を出してしまうのです。

エアコンに使われている冷媒の変遷を調べると、エアコンの性能向上(省エネ性能向上)と地球環境保護、人間の体への影響など、色んな要素が絡んでいることがわかってきます。 冷媒には当初アンモニアが使われていましたが、人体への有害性や爆発の問題から不燃性の特定フロン(CFC)に変わりました。
ところが、特定フロンはオゾン層を破壊することが問題となり、現在では代替フロン(HCFCやHFC)に移行しています。しかし代替フロンには、地球温暖化を助長する温暖化係数が非常に高いという問題があります。

エアコンで使用される冷媒の推移
名称 オゾン層破壊係数
(ODP)
温暖化係数
(GWP)
フロン(CFC) 1 8,500
代替フロン(HCFC) 0.055 1,700
代替フロン(HFC) 0 1,500-2,000

エアコンは毎年省エネ性能の高い製品が登場します。省エネ性能を高めるにはモーターの効率向上なども影響しますが、最も効果があるのがヒートポンプの性能を上げることです。ヒートポンプの性能を上げるには、熱交換機の微細化や形状の工夫で実現しているメーカーもあります。しかし、もっとも手っ取り早いのが冷媒の量を増やすことです。
安易な省エネエアコンが増えることで、家庭内に蓄積される温室効果ガスの量が増える傾向があります。

代替フロン(HFC)が社会に貯まる

日本での冷媒が市中にストックされる状況
HFCが市中にストックされている 出典:日本冷凍空調工業界

特定フロン(CFC)に代わる冷媒として当初利用されていた代替フロンのHCFCは、少ないとは言えフロンを破壊するとモントリオール議定書で指定され、先進国では2020年までに生産が中止されます。現在家庭用エアコンの冷媒は、HCFCに代わってオゾン層破壊効果がゼロのHFCへの転換が進んでいます(上図参照)。
日本では家庭へのエアコン普及率は高いですが、現在でも毎年約700万台が出荷され、1億台程度が稼動していると見られます。エアコン内に貯蔵された代替フロン(HFC)がすべて大気中に放出されるわけではありませんが、地球温暖化効果が極めて高い物質が、社会に潜んでいるのは確かです。

利用者のモラルに頼る「見える化」シール

フロンの見える化シール
「フロンの見える化」シール 出典:フロン回収推進産業協議会

エアコンに内蔵される代替フロンなどの温室効果ガス問題に対して、政府や日本冷凍空調工業会は、エアコンの利用者へフロン回収の必要性を訴える「フロンの見える化」シールを出荷するエアコンに貼り付けることを決めました。
(参照:フロン回収推進産業協議会
既にダイキン工業、パナソニック、三菱電機など大手メーカーは2009年9月より、「フロン見える化」シールの貼り付けを開始しています。

確かに、家庭用エアコンは使用時に冷媒が空気中に漏れる量はごく僅かで、フロンが漏れるのは買い換え時や廃棄時の不適切な処理が主因です。
エアコンは家電リサイクル法の対象で、適切に廃棄処理されればエアコンに含まれる代替フロンも空気中に排出されることはないのですが、エアコンの回収率は30%程度でリサイクル法が上手く機能しているとはいえません。
(参照:家電リサイクル

そんな状況に危機感を抱いて登場したのが「フロンの見える化」シールですが、これもあくまで利用者のモラルに訴える対策です。これで実効性があがるのかチョット心配になります。

業務用機器はフロン漏洩が多い

機器別冷媒排出パターン
機器別 冷媒排出パターン 出典:経済産業省試算

家庭用エアコンより、もっと深刻なのは業務用機器です。スーパーやコンビニに並べられている冷蔵ショーケースは、店舗の模様替えなどで移動することが多く、冷媒のフロンが漏れることが多いのです。さらに、廃棄時には業者によりフロンを回収することが義務づけられていますが、上のグラフのように実際にはほとんど回収されていないのが現状です。

さらに、業務用エアコンやショーケースで使用される代替フロンは一台当たりの使用量が多い上に、家庭用エアコンに利用されているHFCよりも温暖化係数の高いHFCが使われているので、代替フロン漏洩による温暖化効果はより強くなります。

エアコンに含まれるHFCの量
エアコン種類 HFC冷媒充填量
(kg)
CO2換算量
(トン)
家庭用エアコン 1 2
店舗用エアコン 4 8
ビル用
マルチエアコン
20 40
別置き型
ショールーム
10 40
大型冷凍機 500 700
(出典:日本冷凍空調工業界をもとに経済産業省編集)

エアコンの冷媒に使われる代替フロンの地球温暖化問題に対する根本的な対策は、温暖化係数の高い代替フロンに代わる新しい冷媒物質を見つけることです。現在大手メーカーを中心に二酸化炭素やプロパンなどを冷媒に使用する研究が進められています。
既に出荷されている代替フロンの回収率を向上させる施策と共に新たな冷媒を利用したエアコンの登場を期待します。

地球温暖化

年金生活者のロハス

ロハス流移動手段

ロハス流生活術

お金もロハス流

企業のエコ取り組み

ロハス最近の話題

お知らせ